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この年金シリーズで大切なことは、かつて進化論のチャールズ・ダーウィンが言った言葉、「真実を知るには勇気がいる」ということだ。(全9回)

年金の完全理解と大改‪革‬ 武田邦彦

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この年金シリーズで大切なことは、かつて進化論のチャールズ・ダーウィンが言った言葉、「真実を知るには勇気がいる」ということだ。(全9回)

    9.強制徴収と不正使用

    9.強制徴収と不正使用

    規模は小さいが、もう一つ、新しい年金制度を始める前に、改善しておかなければならないことがある。それはこの4月から始まる国民年金の「滞納者」に対する「強制徴収」である。



    これまでのこのシリーズで書いてきたように、1)年金制度は最初から厚生省が使い込む予定で、2)現実にも天下り退職金などで大量の公金を消費し、3)回収の見込みがない(回収するなら税金で支払うしかない)融資を繰り返して90兆円が焦げ付き、4)積み立て型年金を賦課型にして少子化の問題にすり替え、5)現在は「年金で穴をあけても、増税して補てんすればよい」という政策をとってきた。



    だから、まずは厚労省、政治家、専門家など甘い汁を吸った人たちが弁済してからやり直さなければならないのに、それを置いて「責任は年金を支払わない国民にある」とばかりに「強制徴収」に踏み切ろうとしている。



    おそらくマスコミは国民の咎だけを責めるだろう。事実、今日の新聞には特集が載っていたが、そこには眼鏡をかけた真面目そうな女性が「納付率が向上しないと年金制度が信頼されません!」と言っていた。



    年金制度の崩壊は、納付率が低かったわけではない。厚労省の職務怠慢と意図的な使い込みにあったのに、またマスコミは「見かけが正しいほう」を重視するだろうから、「国民は年金を払わなければいけない」という記事を書いていくだろう。



    この問題はさらに少し付け足しておく必要がある。年金を収めるというのは「半強制的にお金を徴収する」ということだから、もちろん「滞納」がある。この滞納の中には、「ズルい人が滞納する」というのと、「お金がなくて払うことができない」というのがある。



    また、長い間、お金を払い続けるというのは大変だ。サラリーマンのように一定のお金が入ってこれば別だが、年金とかNHKのように「お金がなくても払わなければならない」というのは大変だ。その意味で「お金がない時に節約できないもの」を社会から徐々になくしていく必要がある。



    だから、税務署と言うのもなかなかむつかしい仕事で、払いたくないお金をいかに順調に集めるかというのに最大の努力を払っている。たとえば各地域には「法人会」と言うのを作って、普段から税務の勉強をしてもらい、税務署長が挨拶をして協力を呼びかけ、税理士という国家資格を作って税の徴収を正常に行えるようにする。



    もちろん納税は国民の義務だから、私たちが積極的に払わなければならないし、税務署は仕事としてやっているのにみんなから「金をとられる」と恨まれる。それでも、ジッと我慢して税制度を正常にするように努力している。



    また、いくら納税が国民の義務としても、国税庁の長官が「どうせ、国民から集めた金だ。手元に来たらかまうことはない、どんどん使ってしまえ」などと公言したらそれは大変なことになる。



    ところが年金の場合は、「滞納した人にはどうするか」がほとんど決まっていない。今頃になって、「100円徴収するのに90円の経費が掛かりますから、滞納した人に督促することができないのです」などと言っている。



    このことは1億円の滞納があったら、それを徴収する経費が9000万円だから1億円を回収しようとしても1000万円しか回収できないとい

    • 9 min
    8.新しい年金システムを始める前に実施しておかなければならないこと

    8.新しい年金システムを始める前に実施しておかなければならないこと

    かくして1960年から始まった日本の年金制度は、その大半を厚生省などの食い物になって終わった。もちろん政府には「税金」とか「赤字国債」という奥の手があるから、「国民から借金して国民に年金を払う」ということができるから、国民は大損をするけれど、年金の全面的崩壊はない。ただ、自分のお金を取られて自分が年金をもらうだけだ。



    だから、二度と再び、こんなことが起こらないように新しい年金システムを始めなければならないが、その前にしなければならないことがある。



    それは「年金は使ってしまえという方針(故意)で公金を使い込んだ政治家、役人、専門家」にまずは「もらったお金を返還する手続き」をしなければならない。



    天下りで1億円から3億円をもらった人は個人も特定できるから、返還を求める。返還できなければ「横領罪」で逮捕する。回収の見込みのない「公的団体」に資金を貸し付けて焦げ付くか、もしくは税金などで返済を求めた人については、「背任罪」で逮捕し、業務上で横領した国民のお金を返済させる。



    専門家で、研究費や出張費をもらった人にも返還を求める。つまり、もともと「年金」というのはそれを積み立てた本人に渡しものだから、焦げ付いても、退職金としてもらっても、さらには研究費や海外出張費として使っても、すべて「不当な使途」であるから、お金は返還するべきだろう。



    実際にこれを実施したら、高級官僚などの多くの人が破産するだろう。でも「国民のお金」を「私的に流用」すると「あとで返還を求められる」という例をこのようにはっきりしているときに一回、やったほうが良い。



    AIJ投資顧問会社の訴訟の時に検察が裁判で、約250億円をだまし取ったとして、「年金資金の運用に苦労している基金を食い物えにした極めて悪質な犯行」とし、さらに「被害額は類を見ないほど大きく、『わが国の厚生年金基金制度を崩壊させた』といえるほど社会的影響は甚大」と糾弾した。



    法の下の平等から言えば、250億円ほどのお金でこれほど激しい言葉を使うなら、90兆円に上る年金の使い込みと回収の見込みのないところへの年金保険庁の融資は、AIJどころではない。



    しかも、国の場合は、年金課長が「使ってしまえ、天下り先には困らない」と明言しているのだから、「故意の使い込み」であることも明らかになっている。あとは、検察に「国の犯罪を糾弾する勇気」があるかということだけだ



    あたらしい年金制度を発足させるためには二度とこのような公的なお金の横領が起こらないように、過去にさかのぼって返済を求め、罪を認める必要がある。



    長い間、額に汗して税金を年金を収めてきた人にとっては、「公金を使い込んでも、回収不能なところに融資しても、その個人はお金をもらっても良い」という非常識なことができないようにしてほしいというのは普通の人の願いだろう。



    (平成26年2月26日)
    8.mp3

    • 8 min
    7.トリックに加担した人たち

    7.トリックに加担した人たち

    最初から年金の崩壊が予定され、予定通りに国民の年金の大半を使い、いよいよ国民を誤魔化す方法も厚生省の中で十分に議論されたに相違ない。なにしろ、事実がそのままばれれば厚生省の解体にもつながるような重大なことだからだ。作戦は2つ、



    年金自体の問題ではなく、崩壊したのは社会保険庁の責任と言うことにして、国民の批判を社会保険庁に集中する。社会保険庁長官を更迭し、さらに新しい年金機関を作ってリニューアルする。

    年金を計画した時には「理想的なピラミッド型人口分布」だったのに、その後、予想できないような少子化と高齢化が進み、年金が維持できなかったという言換えをする。「若者が支えるのが年金」と言い換えて少子化対策を始める。


    1)は主としてマスコミと後の厚生労働大臣になった長妻さんや民主党などが結果的に担当したように見える。まさか故意ではないとは思うけれど、民主党がもともと厚生省の尻拭いを知っていたかどうかまだはっきりしていない。



    2)は主として専門家が担当した。1930年ごろのピラミッド型人口分布(下図)と2030年ごろの長方形の人口分布(下図)を比較して、「ピラミッド型なら若い人が多いから年金は良いけれど、長方形なら高齢者が多いので若者の負担が増える」と言った。



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    もともと、日本の年金の基本は「積み立て型」だったので、この説明はまったくだましの手口に近いものだが、このような説明をした人の多くが年金の専門家だった。



    またこのころから年金の複雑な仕組みを盛んに報道し始めたが、その仕組みがあまりにも複雑なので、多くの人は説明の途中で疲れて、本質的に年金が成立するのか、自分の年金は積み立てたもののうち、どのぐらいが返ってくるのかわからないままになった。



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    支給年齢も「高齢者が増えたから」という理由で65歳になったが、実は人口分布というのは将来も正確に推定できるものなので、年金が始まった1960年代には未来の人口分布が長方形であることは予想されていた。それは2030年の推定が2000年に確定していたことからもわかる。



    いずれにしても、日本のマスコミ、年金専門家、厚労省関係の官僚の言換えによって、社会保険庁がつぶれて日本年金機構ができ、少子化対策が始まって年金と高齢化の関係が確定した。



    150兆円の年金のうち、90兆円を使い込んだ厚生省は御用学者も動員してこの危機を乗り切ったのである。



    (平成26年2月20日)
    7.mp3

    • 7 min
    6.積み立て型から賦課型へのトリック

    6.積み立て型から賦課型へのトリック

    さて、これまでいわゆる「積み立て型年金」が崩壊する基本的な理由と現実に起こったことを整理した。でも、「何をいまさら」と言うぐらい予想通りで、このシリーズの第一回から登場している例の年金課長の談話を再び聞いてみることにする。



    「使ってしまったら先行き困るのではないかとの声もあったけれども、そんなことは問題ではない。・・・将来みんなに支払うときに金が払えなくなったら賦課式にしてしまえばよいのだから、それまでにせっせと使ってしまえ」



    素晴らしい!! 全く正確に始めた年金がどのようになるのかを予測していて、まさに現実になっている。人が老後に使おうとして必死に貯めたお金を「使ってしまえ」、「なくなったら賦課式に変えれば良い」と言っているのだから、道徳的には大変な問題だが、普通の日本政府のやり方(国民のお金を巻き上げて自分たちで使う)をそのまま正直に言っている。



    (私の推察だが)1960年代に始まった「積み立て型年金制度」は最初から破たんすることが分かっていたので、国民が収めてくるお金は厚生省や政治家が使い込んでいた。



    1990年になるとすでに破たんは目に見えていたので、それを国民に説明するために、次の二つの戦略を立てたと推定される。



    破たんが誰の目にも明らかになる前に、破たんの原因が「もともと破綻する計画だった」というのではなく、「誰かが杜撰な管理をしたから」ということにする、

    賦課型(若い人が払う方式)に変えるために、「少子化問題」を出す必要がある。国民はもともと積み立て型だったことを思い出さないようにする。


    実は、1990年代の終わりに「社会保険庁の不祥事」や「少子化問題」がテレビで盛んに問題にされたとき、私もうっかりそのキャンペーンに引っかかってしまった。



    社会保険庁の不祥事が次々と明らかになり、「5000万人の年金の記帳漏れ」とか「デラックスで使っていない年金保養施設」などが報道されると、「社会保険庁は何をやっているのだ」とか「銀行に預金して、そのお金が分からなくなったなどと言うことはないのに、なぜ「個人の年金預金通帳」がないのだ!」などと憤慨したものだ。



    でもそれがトリックだったことにその当時は気が付かなかった。考えてみれば5000万人もの記帳漏れが厚生省内部でわからないはずもない。「記帳漏れ」自身も当初からの計画と思われる



    もう一つ、「自分が積み立てて自分が老後にもらう」という「積み立て型」だった年金だから、子供とは一応、無関係である。ところが1990年代から急に「少子化」という問題が湧いてきた。



    子どもの数が少なくなってきて年金の支払いに支障をきたすという話である。もともと、「積み立て型年金」の日本の制度は本人と勤め先が半分半分、お金を拠出して、そのお金を厚生省が運用して年金支給年齢に達したら、年金として戻すという説明だった。



    だから、子供の数とは関係がないし、自分で貯金するより社会の変化に応じて支給できるということも説明された。だから国民は年金制度に協力したのだが、最初から実現が不可能な制度だったので、年金課長は「使ってしまえ」と言い、「払うときにはお金がないから賦課式にしろ」という計画だった。

    • 8 min
    5.甘い汁を吸った人はどうしたか?

    5.甘い汁を吸った人はどうしたか?

    ところで年金課長は次のようにも言っている。
    「厚生年金保険基金とか財団とかいうものを作ってその理事長というのは、(150兆円もあるので)日銀の総裁ぐらいの力がある。そうすると、厚生省の連中がOBになった時の勤め口に困らない。」



    厚生省の幹部は年金のお金を国民から集めると天下りに困らないと言っている。その通りだ。事実を整理してみよう。



    1)年金局長と事務次官を経験したK氏は、全国社会保険協会連合会などに天下りして、退職金7000万円のほかに3億5346万円を受け取った。
    2)年金局長、社会保険庁長官を経て天下ったY氏は退職後、2億4339万円を受け取っている。
    ・・・・・・・(無数)・・・・・・・・・



    年金のもともとの目的は国民の老後を守ろうとしたものだが、現実には「40年後には貨幣価値が変わって、どうせなくなる」ということで、厚生省の幹部が数億円のお金を退職後に受け取り、全国に保養所を作り、回収の見込みのない公的機関にお金を融資した(先回に説明した)ということなのだ。



    ここで、少し考えてみよう。 年金が始まるとき、「積み立て型年金」で始まった。それは「自分が若いころ積み立てて、自分が老後に受け取る」ということだった。本当はそんなことは日本社会ではありえないのに、国民はそれを選択した。



    専門家に騙されたともいえるが、民主主義だから決めるのは国民だ。国民は最初から以下のような年金制度を選択したと言える。国民の責任である。



    1)「自分が貯めて自分がもらう」という方が良いような感じがして積み立て型年金を選んだ、
    2)そうすると40年後には10分の1になっている(賃金ではベースアップを求めているのだから、インフレを望んでいて、年金はデフレを希望しているので、国民は自分自身の行動が矛盾している)、
    3)年間20兆円ほどの年金の規模で、厚労省の幹部1000人が一人2億円をもらっても、合計で2000億円にしかならず、年金支給総額の1%(100分の1)にしかならないので、目立たない。天下り推奨のような制度だ、
    4)貸付先は公的機関なので焦げ付くのは決まっている。



    これらのことはすべて簡単なことなので、国民が理解できないということはない。だから、最初から「国民は欲が出て、損を承知で年金を始めた」ともいえるし、政府の方は「どうせ、国民は未来を考えていないから、積み立て型と言えば年金を開始できるだろう」と考えたと思う。



    ここで数回引用した年金課長の談話は、当然のことを言っている。それを「本当の年金」にしなかったのは誰だったのだろうか?



    (平成26年2月18日)
    5.mp3

    • 9 min
    4.どのぐらいなくなったのか?

    4.どのぐらいなくなったのか?

    私たちが収めた年金がどのぐらいなくなったのかという計算がいろいろされているが、国民が収めた公的年金の積立額総額は数字が発表されていないが、今、(形式的に)残っているといわれているのが、国民年金関係で10兆円、厚生年金で150兆円とされている。



    しかし、これは「残っているはず」のもので、現実には政府の管理する特殊法人や地方自治体に貸し付けて、帰る見込みのないお金が 約90兆円ということが分かっている。数字は信頼できるところがないので、つじつまの合わないところがあるが、すでに60兆円しか残っていないので、税金で300兆円ぐらいを補てんすると言われている。一説に総額800兆円という話まである。



    なぜ、年金に責任を持っている厚労省が「国民の立場から見た正しいレポート」を作らないというと、「作れないから」と言ったほうが正確だ。



    年金の運用先(貸している会社など)は、たとえば、住宅金融公庫、年金福祉事業団、日本政策投資銀行、国際協力銀行、都市基盤整備公団、日本道路公団、国民生活金融公庫、農林漁業金融公庫、社会福祉・医療事業団、電源開発公団、日本鉄道建設公団、日本育英会、緑資源公団、地域振興整備公団などで、これらの公団などには、もともと15兆円の政府出資金と、2.7兆円の補助金が出されている。



    つまり、貸している先がほぼ「赤字事業体」で、それを税金や補助金で運営している(評価CC(最低))なので、正常な意味で「投資した資金が返ってくるか」という計算自身ができない。



    つまり、次の2つの理由で「貸したお金が返ってこない」か「返ってきても意味がない」。
    1)貸している公団などのほとんどが「赤字」なので、もともと返ってくる見込みのないお金であること、
    2)仮に返ってきたとしても、それは政府が税金や赤字国債を使って返してくるのだから、国民にとっては「収めた年金」を回収するために「自分が納入する税金」が使われるので、同じだ。



    年金の貸し先である「公的機関」は政府などのお金で運営されていて、1年に20兆円ぐらいの税金と補助金だ。1990年から25年間とすると、そこに税金や国債(国民から)のお金がすでに500兆円も投入され、それに年金側が100兆円ぐらい貸しているということになる。



    だから、年金を貸して焦げ付くという印象を国民に与えてはいけないと政府が考えれば、どうせ税金と国債で運営されているところだから、税金か国債のお金で年金を返せばよい。そうすると、年金の見かけは良くなるけれど、その分、税金が使われる。



    さらに、厚労省が「焦げ付いた金額」を発表できないのは、ほぼ戻らないお金だが、まだ「貸している状態」だから、それが「焦げ付く」と正式に認めることができない。その結果、厚労省のレポートは実質的にウソが書かれるので、専門家によって推定するので差がみられることになる。



    もともと、私企業でも儲けるのが大変なのに、公団のようなところが儲かるはずもなく、また儲けると逆に文句を言われる。公団などに勤めている人の多くは真面目な人で、少なくとも自分では誠意をもって仕事をしていると思っているが、なにしろ「効率が悪くてビジネスにならないので公的な機関がやってい

    • 10 min

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