1989年11月にベルリンの壁が崩壊してからわずか6週間後、レナード・バーンスタインはクリスマスの日に行うコンサートを指揮するためベルリンに入った。演目はベートーヴェンの第九。この名作の第4楽章は“Ode to Joy”つまり「喜びの歌」の合唱で大団円を迎えるが、この日のコンサートでは“Ode to Freedom”すなわち「自由の歌」に歌詞を変えて演奏された。このような情熱あふれる、大胆な演出を見せつけたバーンスタインは、まさにキャリア絶頂期であった。東西ドイツの合唱団やソリストたち、そしてバイエルン放送交響楽団を中心に特別に編成された国際的なメンバーによるオーケストラの演奏も、万感の思いがこもったもの。より精巧な演奏は他で聴けるかもしれないが、これほど力強く、国境を越えた友愛の素晴らしさが感じ取れるレコーディングは無い。一夜限りの歴史的演奏を追体験できる感動的なアルバム。