演歌や歌謡曲を真っすぐに歌うテレサ・テンが楽しめる、日本で初めてのオリジナルアルバム。すでに台湾や香港をはじめとしたアジア諸国でトップスターだった鄧麗君（デン・リージュン）は、歌手としてのさらなる成功を夢見て1974年3月、21歳の時に歌謡ポップス調の「今夜かしら明日かしら」で日本デビュー。しかし満足のいくセールスを残せなかったために2作目のシングル「空港」から演歌路線に転換したところ、これが大ヒットを記録し、最終的には日本レコード大賞新人賞を獲得した。そして続く3作目のシングル「雪化粧」も好評を得る中で作られたのが本アルバムだった。LPレコードでA面にあたる前半はそのシングル3作を収め、すべての作詞を山上路夫が手掛けた。対してB面にあたる7曲目以降は小坂明子の「あなた」など、他のシンガーのヒット曲をカバーしている。テレサは日本語での歌唱を始めて間もないこの当時から、歌詞の意味を理解するために日本側のスタッフと相当なやり取りを重ねながら歌に臨んでいたとのことで、それが繊細な歌唱につながっている。思えばこのアルバムの頃は、彼女が歩む激動の歌手人生のまだ序章だった。