ロックに比べ、ジャズにおけるギター奏者はホーン隊の影に隠れて地味な存在になりがちだ。しかしギターだからこそ抽出可能なブルージーな空気感は、デルタやシカゴブルースなどとは異なるジャズ固有のブルースフィーリングを醸し出し、独自の味わいがある。ジャズギタリストの中でも屈指の個性、テクニックを有したウェス・モンゴメリーの1960年録音の本作は、ジャズならではの濃厚な空気感をたっぷりと堪能させてくるアルバム。オクターブ奏法で知られるウェスだが、ピックを使わず親指で弦を弾くことで生み出される太く滑らかな音色の魅力たるや、媚薬のように聴き手を魅了する。ソニー・ロリンズ作の人気曲"Airegin"からスタンダードナンバーの"Gone With the Wind"まで、超絶技巧を駆使しつつも、そうとは感じさせない抜群の歌心で心地よくリスナーを酔わせてくれる。