かねてから精神世界に深い興味を示していたが、さすがに"輪廻転生"を意味するタイトルを冠したアルバムをリリースすることに、誰もが驚かされたことだろう。しかし、ニューエイジ的な幻想性などは本作には見られず、前作までのAOR路線とは完全に一線を画した攻めのサウンドに満たされているのがユーミンらしい。のちに作品の主人公に捧げた"今すぐレイチェル"を書き上げるなど、前年に公開され最も好きなSF映画という『ブレードランナー』の独特な近未来感がアルバムに与えた影響は少なくないだろう。特にエフェクティブなMCとボコーダーヴォイスで幕を開ける"ESPER"や何かの胎動を感じさせるドラマチックな"REINCARNATION"、大胆なシンセブラスの導入を試みた"ハートはもうつぶやかない"など、時代のテクノサウンドをあくまでもフレイバーとして取り入れつつ、新たなユーミンサウンドを模索し始めている。
- 1981年
- 2020年
- 1989年